わがまま科学者日記

純粋に科学のお話をしたい。。

私の留学記(6)食べものと研究

日本の研究者は、米国の教育システムなどについて、知っているようで知らないことが多い。研究留学を考えたら、そういうこともある程度は知っておいた方がよいと思う。

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セントルイスのワシントン大学Washington Universityは、伝統のある大学だが、研究が盛んなメディカルスクール、病院エリアとUndergraduateキャンパスというのは距離が離れている。その間にあるのが、20世紀初頭に開催されたセントルイスオリンピックとセントルイス万国博の会場となった公園だ。従って、いわゆる大学生(学部生)というのはメディカルスクールのあるキャンパスにはほとんどいない。そのかわり、病院があるので、夜、土日、ホリデーシーズン、雪の日など、何か食べるものは入手できた。ただ、やはり典型的なアメリカンジャンクフードである。
 
日本人によっては、口に合わないらしく、全くこういうカフェテリアには行かないというような人もいたのだが、私の場合、結構、冒険的なフードでも全く大丈夫だった。米国に研究留学する日本人の中には、頑強に「日本の暮らしをする」という人もいたりする。例えば、一般のグロサリーには行かず、日本食専門店に通い、朝も日本食、昼は日本食の弁当、夜も。。という具合だ。こういうのは、結構、人生観とか、新しい食べものに果敢に挑戰する冒険心とか、多様性を受け入れるスピリットなどにも反映しているのではないか、と個人的には考えている。その結果が、研究スタイルなどにも現れたりすると思う。
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ところで、海外に研究留学する場合、もちろん研究内容や行き先の研究者の人なりというのが大切なのは論を待たないが、大学か、研究所か、という問題がある。例えば、生命医学系だと、日本からワシントンDC郊外にあるNIHに滞在するという選択は結構あるかもしれない。一方、大学に研究留学するというケースもあるだろう。大学でも、地方の州立大学のように、研究がそれほど盛んではなく、研究者層が薄い大学もあるし、ハーバード大学やスタンフォード大学のように、研究者層が厚く、先端研究が行われている私立大学もある。また、同じ大学でも、病院と隣接したメディカルスクール(注)のような場所もあれば、大学生の教育を行うことが中心のUndergraduateキャンパスに行くということもあるだろう。米国には、リベラルアーツ・カレッジというエリート有名大学があるが、研究を主体にした場合は、こういう場所に行くケースはないかもしれない。
 
私は、日本の大学院を卒業して博士の学位を取得した直後くらいに米国に研究の場を求めるとすれば、やはり強力な大学院のある場所をすすめると思う。そういう場所では、大学院の学生のための様々な教育的な施設や機会が充実している。また、ラボに若い大学院生がいたりするのは、いろいろな意味で楽しいものである。日本でもそうだが、ポスドクになると、いろいろな損得関係がでてきてしまい純粋な付き合いや議論ができにくくなる。一方、院生は、たいてい無邪気である。
 
もちろん、研究所でも、大学院と連携していて、院生が少しいる場合もある。それでも、強力な大学院のある大学というのは、大学院修了直後の若い人にはいろいろなことを考えさせる刺激を与えるはずである。米国にある大学院の評価では、US News and World Reportというのが有名である。分野別でも評価されている。順位が1,2違うというのは全く意味がないと思うが、10くらい違うと、やはり何か違いがあるということだと思う。
 
また、米国の大学は、非常に紛らわしい名称のものもあるので、混乱しないように注意が必要である。例えば、Washington University(Wash U)と(The) University of Washington は、全く異なる大学である。
 
(注)日本では、米国の大学の「医学部」という言い方をすることがあるが、米国の大学の医師養成のための教育機関は、メディカル・スクール(medical school, med school)という「大学院(大学卒業後に進学する)」である。大学では、Premedというメディカル・スクールに進学するための履修コースを用意していることがあるが、これはメディカル・スクールではない。