パート1では、遺伝子関係の本が中心でしたが、今回は2冊の「歴史書」の紹介です。歴史の中では、為政者の戦争や政治などに埋もれてしまいがちなのが、民衆のあいだに広がって、国の命運にも影響を与えた感染症と飢饉。こういうものに対して戦ってきた人々を描いた2冊です。生命科学研究の歴史としても楽しめる読み物だと思います。
(1)感染症を克服する歴史書
これは、とても面白い本だと思います(当時は、死に至る病だったので、面白いというのは語弊があるかもしれません)。
Get Well Soon: History's Worst Plagues and the Heroes Who Fought Them (英語) 2017/2/7 Jennifer Wright (著)
例えば、中世の人類史では忘れることができない黒死病。そこで紹介されるのが、ノストラダムス(1503-1566)の対策法。ノストラダムスというと占星術師として、例の「大予言」が有名ですが、ペスト対策や調理の書物を著した医者(医療評論家)だったそうです。
この「Get Well Soon」では、ペスト、結核、コレラなどの感染症が、当時、どのように理解され、どのように対策されていたのか、現在の医学の視点から説明していきます。
まだ邦訳はないようです。
(2)食糧不足を克服する歴史書
これは、米国のラジオ科学番組Science Fridayのなかで、2017年一番の科学本だという解説者がいて知った本です。
例えば、アイルランドのじゃがいもの病気などと人々の対策の歴史を、生命科学とともに解説したりしています。非常に情報量の多い書物といえるでしょう。米国の優れた科学の本というのは、とにかく情報が多いので楽しいです。
Never Out of Season: How Having the Food We Want When We Want It Threatens Our Food Supply and Our Future (英語) 2017/3/14 Rob Dunn (著)
この本は、既に邦訳がでています。
世界からバナナがなくなるまえに: 食糧危機に立ち向かう科学者たち 単行本(ソフトカバー) – 2017/7/25 ロブ・ダン (著), 高橋洋 (翻訳)