今回と次回は、「神経科学」「脳科学」関係の本を紹介したいと思います。
日本では、脳科学というと、テレビ番組によく出演している自称「脳科学者」の書いた本がよく売れているようです。拙ブログは、純粋な科学を語ることにしているので、こうした書物については、とりあえず無視したいです。一般論として、脳について、断定的な物言いで人生への利用や社会のあり方を語る人、PubMedで検索しても原著論文がほとんどでてこない人は問題ありと思っておけば間違いないです。
今回紹介したいのは、この本。
あなたの脳のはなし:神経科学者が解き明かす意識の謎 – 2017/9/7
デイヴィッド・ イーグルマン (著), 大田 直子 (翻訳)
最近、スタンフォード大学に移籍した神経科学者デイヴィッド・ イーグルマン氏が、去年、米国のPBS（日本で言えば、NHKのEテレ）の「脳」についての啓蒙番組に出演した際の内容を本にしたもの。日常生活での脳、意識、意思決定などを、わかりやすく解説しています。「THE BRAIN with David Eagleman」でYouTubeを検索すると、PBSでの6回分の放送が全部無料で見れるようです（著作権が不明なので、ご自分の責任でどうぞ）。
The Brain with David Eagleman - Wikipedia
ちなみに、 イーグルマン氏は、この本が出世作です。
あなたの知らない脳──意識は傍観者である
(ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 2016/9/8
私は、2年ほど前に、隣のラボのヘンシュ先生主催のシンポジウムで、イーグルマン氏のお話を聞きましたが、この人もややあぶない語りをする傾向があると思いました。PubMedで検索すると64報がでてきます。
次に紹介するのは、このビデオ「Brain Myths Exploded」。安価なオーディオブック版（米国のAudible、Great Coursesなどで入手可能）もあります。サンフランシスコを拠点とするIndre VIskontas博士が、脳神話の問題（全24回、1回30分）を解説したものです。
これが、YouTubeの公式サイトです。いくつかのエピソードは無料で公開されているのでしょうか。
Viskontas博士は、神経科学で博士号を取得しています。PubMedでは、21報がでてきます。
一方、オペラにも出演する本格的ソプラノ歌手、そしてママさんでもあります。「Inquiring Minds」などのPodcastでも活躍しています。内容的には、一般向けに、脳神話の問題を解説したものですが、丁寧かつ慎重に作られていて安心できる内容です。話慣れているせいか、語りがうまいですが、専門の神経科学者には、内容的に退屈でしょう。
Podcast：Inquiring Minds http://www.motherjones.com/topics/inquiring-minds/
