わがまま科学者日記

純粋に科学のお話をしたい。。

私の留学記(8)日本人研究者

あなたが全く知らないと思っているとても偉い先生でも、あなたを知っている可能性があることを、若い人は知っておくべきだと思う。ただ、知っているという「コネ」がポジティブに働くか、ネガティブに働くのかはわからない。

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日本からWash Uに研究留学した研究者として、早石修氏、岡崎令治・恒子夫妻がいたことは既に記した。他にも数多くの日本人研究者が滞在したことだろう。往年の研究者としては、廣川信隆氏(東京大学医学部)や仲村春和氏(東北大学)などが有名である。仲村春和先生のところには、日本に一時帰国していたころ(これについては後日)、実験法の取得のために訪れたことがある。廣川信隆教授については、廣川教授が編集者だったこの本(Encyclopedia of Neuroscience, 2006)のチャプターを担当させていただいた。

そして、意外?な人がWash Uに留学していたのを知っている。物議を醸す発言でよく知られる中山敬一博士(九州大学教授)である。中山敬一氏とは年齢的に近いが建物が違ったので、直接接する機会はなかった。たまたまラボのメンバーの友人が中山敬一氏が滞在していたラボのメンバーで、同じ階に研究上のライバルラボがあるというとんでもない環境だという話だった。このようなえぐい場所で成果を上げてきた研究者なら、あのような思想を持つにいたるというのはよくわかる。成功した研究者のキャリアについてのアドバイスは、いつも自分の限られた成功体験が原点にあると思う。

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さて、海外では、日本人同士の不思議な距離や連帯感が生まれやすい。海外で同じ場所にいる日本人は、どういうわけか反発的な関係が見られることも多い。これは欧州や他のアジア諸国の研究者とは少し違う文化である。しかし、そういう人達も、何か大きな事件や事故などがあれば、同胞として助け合うような関係になるのではないか、と私は思ってはいる。

ところで、私自身、日本の各地に滞在していたり、主流のグループに近かったせいか、思いがけないところで、私を知っているという人がいたりする。これは、興味深いことであるが、自分が全く知らないと思っているとても偉い先生でも、何らかの知らない機会に(大衆に紛れて聞いていた学会発表、研究費などの審査とか、留学先が同じとか)、もしかしたら認識されている可能性もあることを、若い人は知っておくべきだと思う。したがって、学会発表、研究費等への応募などは、回数を増やせば、知ってもらえる可能性が高くなる(落とされても)。実は、そういうのも「コネ」になったりする。世の中は広いようで狭いのである。もちろん、知っているという「コネ」がポジティブに働くか、ネガティブに働くのかというのはわからない。