わがまま科学者日記

純粋に科学のお話をしたい。。

杜撰な科学

こちらのブログは、純粋に科学を語るということを目的としています。数年前ですが、日経バイオテクへの寄稿の中で、「バッドデータ」問題というのを話題にしたことがありました。

 

 「科学研究では、学術論文発表前の学会発表、発表された論文、あるいは蓄積されたデータベースなどに、様々な原因で生じた「間違い」があり、再現性がなく、信頼性が低いものがあるというのは、研究者の間ではある程度常識となっている。」

bio.nikkeibp.co.jp

 

データを扱う科学研究の重要性が高まるにつれて、この問題はますます大きな意味をもってきているように思います。2017年に発行された本のなかで、こんな本が話題になっていたので、読んでみました(実際はAudibleで聴いてみました)。

 

Rigor Mortis: How Sloppy Science Creates Worthless Cures, Crushes Hope, And Wastes Billions 

by RICHARD HARRIS

 

Rigor Mortis」というのは、「死後硬直」という意味です。

筆者は、米国の公共ラジオ放送(日本でいえば、NHK)のベテラン記者の方。科学報道担当ということですが、問題についての理解の深さと議論の水準の高さは驚くべきものがあると思います。

 

Googleでも招待講演していました。

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日本では、再現性というと、不正の問題と同じように理解している人も多いと思うのですが、再現性とはそんな単純な問題ではないということがよくわかります。また、単に「杜撰」という言葉で済まされるようなことでもない。この問題を解決するための科学者たちの試みも伝えています。科学者、医学者、科学報道関係者などに広く読まれるべき本であると思いました。

 

こういう本こそ、翻訳して欲しいと思いますが、実例が米国のものが多く(STAP問題も扱っていますが)、邦訳されるかどうかはわかりません。