今回は最近読んだ人工知能関係の本を3点紹介したいと思います。 中身そのものをあまり紹介してしまうとネタバレになってしまうので避けますが、是非考えていきたい問題を含んだ3冊の本です。
AI Superpowers: China, Silicon Valley, and the New World Order
2018/9/25 Kai-Fu Lee (著)
著者のKai-Fu Lee 氏(李開復)は、北京を拠点とするベンチャー投資家です。台湾生まれで、カーネギーメロン大学でPhDを取得後、Microsoft社を経て、Google中国オフィスの代表でした。
米国と並んで人工知能超大国となりつつある中国。どうして中国が人工知能超大国となるのか、その有利さを指摘しています。いろいろなことがあるでしょうが、どうも最大の有利さは、「データ」の量であるということのようです。
最近、日本では政府の統計関係の問題が大きな話題になっています。日常的な実験の中で得られるデータではなくて、世の中に存在するデータ収集とその質の大切さは、これまで私も指摘してきました。
「Biology5.0で一番大切なのは何なのかというと、実は「データ」なのだと思います。つまり、「どんなデータでも収集してしまう」ということが大切です。」
「バッドデータ問題が顕在化する」
世の中にあるデータというものを深く考えてみることが大切だと思います。
Kai-Fu Leeの本では、中国ということにとどまらず、人工知能というものについて考える様々なヒントが書かれていると思います。そして、Kai-Fu Lee氏のかなりショッキングな健康問題も。。お元気でいてほしいです。
しかし、この本のなかには、日本のことは全くでてきませんね。
(2)深層学習革命
ソーク研究所(The Salk Institute for Biological Studies)というと、ポリオワクチンを開発したジョナス・ソークによって創設された生物医学系の研究所ですが、そこでコンピュータ神経科学の研究室を持っているTerry Sejnowski氏の著書です。
The Deep Learning Revolution (The MIT Press)
2018/10/23
Terrence J. Sejnowski (著)
この本も、人工知能の技術を学ぶというものではなく、Deep Learningの歴史や考え方などを説明しているというものであると思います。日本の研究者もでてきます。
ソーク研究所というと、2018年はセクハラ問題で大揺れでしたが、生物医学の研究所にこのような本が書ける研究者がいるというのは良いですね。
(3)無人の軍隊:自律兵器と戦争の未来
Army of None: Autonomous Weapons and the Future of War 2018/4/24
Paul Scharre (著)
最近もハーバード大学のコンピュータサイエンスのカリキュラムには「倫理」の教育が積極的に取り入れられるという話題がありました。
人工知能兵器というのは現実のものになっています。しかも怖いのは、極めて日常的に見える人工知能の研究というのが、そのまま兵器に転用できるということだと、私は感じます。日本の多くの大学では、軍事研究をしないというような声明を出したりしていますが、そんな簡単に言ってしまってよいのでしょうか。もっと考えて欲しいです。コンピュータサイエンスの専攻の学生さんは、深く倫理を学び議論したりする機会があるのでしょうか。