わがまま科学者日記

純粋に科学のお話をしたい。。

科学者の人生(4)銃声から遠ざかれ

銃声から遠ざかれ。喧嘩は遠くから見ることだ。自分が喧嘩をするときは、自分の土俵で戦うことを考えよ。

エドワード・O. ウィルソン「若き科学者への手紙:情熱こそ成功の鍵」

日本の国際生物学賞も受賞したハーバード大学名誉教授のEdward O. Wilson (1929-)博士は、近くの建物にいたこともあり、たまに同じエレベータに乗ったりしたこともあった。デイビッド・ヒューベル博士と隣り合って小便をしたのと同じような巨人との思い出だ。

 

上の本の中で若い科学者が成功するための「ウィルソンの5原理」の一つとして紹介されている。残りの4原理も興味深い。。

March away from the sound of the guns. Observe from a distance, but do not join the fray. Make a fray of your own. 

 

戦っている軍隊では、銃声を耳にしたら、そちらに対峙しなくてはならない。しかし、科学研究では、銃声を耳にしたらそこから逃げて、距離を置けとアドバイスしている。つまり騒がしい流行の論文、分野、科学に近寄るな、遠くから眺めておれ、ということだ。

これは、多くの先達が言っている。

流行になっているテーマは誰かが重要にしたのであって、 誰かが重要にしてくれた舞台の上で、一見華やかな踊りをまって いても空しいことではないか。それは良い意味でアンビシャスな 若い研究者のすべきことではない。 (佐藤了、生化学者)

人が面白いということや、今面白いことはやるな、自分で考えたテーマを面白くせよ。(江上不二夫、生化学者)

流行を追わないことです。自分が正しいと思う道を進むことです。そして継続することです。そうすればそれが流行になります。(岸本忠三、免疫学者)

独創的な研究は、だれも関心を示さないところから始まるものです。いまの日本人は、他人の成果の後追いばかりしているように感じます。 (石坂公成、免疫学者)

CellやNatureに出た面白い論文を見て、「それをやってみよう」と考えることは、決して、本当の意味で独創的なものにはならない。(竹市雅俊、発生・細胞生物学者)

でも日本の上層部の科学者は、どうもこういうのを煽っているような人も多い。最初の銃声が聞こえない人もいて、銃声の木霊、その木霊を聞いて、今更のように銃声だって言っている人もいる。特に、神経科学関係では多いような気がする。。

f:id:dufay:20211030181334j:plain