わがまま科学者日記

純粋に科学のお話をしたい。。

「無職」での日本帰国など(その2)

先日、個人のサイトで書いたように、今年いっぱいで日本に帰国することになりました。結局、研究を続けることができるポストが見つからなかったので、「無職」での帰国です。ハーバード大学との関係はアソシエートとして維持しますので、ハーバード大学関係者として公式に活動することは可能です。こちらで事情を説明しています。

私が不思議に思うのは、私の研究分野は、決して地味な研究分野ではなく、一般的な意味で先端分野であると思いますし(コネクトーム、scRNAseq、ゲノム編集、次世代抗体、神経科学)、その分野でそれなりに実績があって、現役として活躍している研究者が、日本で「ポスト」が見つからないということなのです。しかも、科学コミュニケーションにも熱心で、英語(在米20年)でも指導や講義ができたりする(このような人材を日本の大学は求めてきたのではないのでしょうか?)。
 
こういう人材を活用できないで「無職」にさせておくという日本の科学研究の業界。。
これでは、日本の科学が衰退、危機になるのも当たり前だと思いませんか?
 
私は、個人的には柔軟なので、正直、ポストがあれば、それに合わせていろいろできるとは思います。これも偏見があって、日本の研究者というのは、この人はこういう分野の人だからと勝手に思い込んで、こういう私の持つ柔軟性の部分が理解できない人が多いのではないか、と思っているのです(一般的な博士人材の活用についても同じ問題があると思います)。
 
もちろん、柔軟性というのは、優柔不断でもあると解釈されるわけですが、私のやってきたことはその道ひとすじでぶれない、非常に堅固であると自分では思っています。例えば、最近もscRNAseqをやっていますが、これも自分の1990年代のテーマの延長として、先端的な技術を利用してやっているわけで、話を聴いていただければ、これが単なる流行追いではなく、必然的にやっているということがわかると思います。
 
というわけで、今回は私にとっての理想的なポスト、あるいは将来について少し考えてみました。上から順に現時点では理想とするものです(それも柔軟に考えています)。1-4はアカデミアのポストですが、5の民間のポストにもとても興味があります。もっと言えば、これらのコンセプトを同時にいくつか実現するのが理想とも考えています。
 
1)静かに地味で着実な基礎科学の研究を行う
 プレプリントで公開したような内容(eLifeに投稿し基本的にはアクセプトという査読結果。少し計算機的な見直しが必要。)の続きを行う。問題として、高額なシングルセルRNAseq、Spatial Transcriptomics、Computational Biology、バイオイメージング、生理学、電顕など、施設的、研究費的にかなり贅沢なウェットなラボを設置できる場所でないと実施できないと思っています。ただ、自らのテーマを定めながらも、そこからスピンアウトさせる方法論の開発や共同研究(例、scRNAseq、コネクトミクス)などで、発展させることは可能だと思います。そういう技術でベンチャーを始めるということにも興味があります。また、個人的には、私のテーマを引き継ぎ、発展させることができるような後進を見つけ、指導してみたいという気持ちが強いです。
 
2)大きな研究室の片隅で、1)のような研究を何らかの形で行いつつ、大きな研究室のメインテーマにも貢献する
1)のようなテーマを直接やっているわけではないが、高額機器の利用など研究手法に共通性がある財政基盤のしっかりしたラボの片隅で、研究を行う。そのなかで、1)のような研究を追求していく。
 
3)大きな研究室のテーマに直接、私の経験を導入する
それでもだめなら、私自身の研究は諦めて、大きな研究室のテーマに直接、私の経験を導入する(年寄りの助教)というような立場であっても構わないと思っています。そのかたわら、 例えば、Computational Biology日本版AAASの立ち上げや、機会があったら本などの執筆などもしてみたいとも思っています。ウェットなラボを事実上持たず、私立大学の講義を担当するだけのようなポストでも構わないです。
 
4)意欲ある若手研究者に独立させ、私を名目上のリーダーとしてもらう
日本ですと、若手研究者が例えば十分な論文数がなかったりして、独立して自分の研究を行うことがまだ難しい部分があると思います。そういう場合、私を名目上のリーダーとして担ぎ上げ、そういう若手研究者に自由にやってもらうという講座的なラボ形態を作ることも可能だと思っています(例、私が教授で、若手が助教など)。日本では、こういう都合のよい話をして若手研究者をだます教授が多いのも事実だと思います。でも、私は独立問題ではいろいろ苦労してきましたら、こういう部分はとても理解があることは間違いないです。ただ、あまりに分野が違うと難しいとは思いますが。。
 
5)民間
私は、アカデミアではなく、民間にもとても興味があります。企業の研究アドバイザーみたいな感じのポスト、ヴェンチャーの立ち上げ、教育産業、いろいろ興味はあります。そういうポストに応募もしてきましたが、返事もくれないというケースがほとんどです。

最近も慶應医学賞を受賞されたHuman Cell Atlas, scRNAseqで有名なMITのAviv Regevさん(PhDです)は、MITを辞めて、Genentechの首脳に就任しました。

Genentech: Press Releases | Changes to the Roche Enlarged Corporate Executive Committee

私もscRNAseqや抗体医薬の知識を持っていますし、日経バイオテクに記事を書いています。

 

場所は日本国内でしたらどこでもよいです(北海道から沖縄まで)。海外での生活はもう十分ですし、日本のために貢献したいのです。

よく中国はどうか、と聞かれるのですが、私の場合、どうしても香港やウイグルなどの問題など、国家体制についての議論をしたくなってしまうので、無理だと考えています。

 

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