わがまま科学者日記

純粋に科学のお話をしたい。。

2018-01-01から1年間の記事一覧

2018年の読書(その2)ノーベル賞、脳、進化、そして今

終わりつつある2018年。私の今年を振り返りながら、紹介したいと思います。 (その1は、内容が「科学」ではないので、別のところにアップしてあります。) 私の iPhoneのAudibleのスクショ。 (1)ノーベル賞 The Breakthrough: Immunotherapy and the Rac…

私の留学記(16)研究者の人生

以前も書きましたが、この留学記は、現在にいたるまで、50回分くらいの量を想定しています。まだ、1995年くらいの時代、16回目であるということを、確認しておきたいと思います。 今回は研究そのもののアプローチでなく、研究者の人生でどんなことが大切か、…

バイオ系プロトコール集

今日のネイチャー誌に、protocols.io(下を参考)というサイトを作った Lenny Teytelmanさんのお話がでていました。実験の方法をきちんと公にしようということですが、たまたまTeytelmanさんのTwitterで、プロトコールをまとめているサイトを見かけましたの…

私の留学記(15)ノスタルジア

日本に帰国して、ラボにお金がないということだったので、民間財団の研究費に応募した。応募すると、ほとんど通過して連戦連勝という状態だった。落とされて、がっかりしたという経験がないような状態である。1995年 病態代謝研究会(山ノ内財団)・研究奨励金…

私の留学記(14)「日本」で成功したい若手研究者へのアドバイス

「日本」で成功したい若手研究者へのアドバイス (本当は変わるべきだという皮肉と願いをこめて) 1 組織やヒエラルキーを重視し、自分の好奇心や自由奔放さを抑制するべきです。腰を低くして45度のお辞儀をするという気持ちが大切です。 2 コミュニティに…

私の留学記(13)テーマの始まり

前回に続いて、これから始まる物語の「伏線」です。留学記そのものとはあまり関係なくなってしまうのですが、研究テーマというのはどうやって始まるのが理想なのでしょうか? ====================================== 物事の真の意義はいつも明白とは限らな…

私の留学記(12)流行を追わない

私が昔から心がけているのは、「流行を追わない」ということでした。これは、1991-94年までの最初の留学時にも非常に気をつけていたことです。これは、私の系譜の1つである江上不二夫さんの影響というのが大きいと思っています。 =========================…

カンパのお願い

Twitterやブログで、神経科学を中心に科学関係の情報を紹介しています。更にバージョンアップするため、日本で使用されている神経科学用語を日本語で正確に把握する必要性、そして最近日本で広く読まれている本の内容を把握することの重要性を感じています。…

基礎からの神経科学(その5)カハール展

マサチューセッツ工科大学MITの博物館で今年いっぱいまで展示されている「The Beautiful Brain: カハールの描画」に行ってきました。MIT博物館は、(ハーバードIDを持っていると無料で入館できる)ハーバードの自然史博物館に比べて見るものがないので、行く…

基礎からの神経科学(その4)Podcast

今回の本題は、神経科学関係のPodcastの紹介です。 iPhoneなどのスマホで音楽、ポッドキャスト、オーディオブックを聞いたりしている人も多いと思います。通勤、通学、あるいは実験の合間などに気軽に聞くことができるので、情報を得る手段としては効率的だ…

基礎からの神経科学(その3)BrainAwarenessWeek

毎年3月中旬の一週間は、Brain Awareness Week (BAW)ということで、世界的に「脳」についての科学を啓蒙するということになっています。今年は、3/12から3/18ですが、この週の前後に、様々なイベントがあります。 BAWは、もともと米国のDANA財団(www.dana.or…

私の留学記(11)人の一生は重き荷を負うて

人の一生は重き荷を負うて遠き道を行くが如し 急ぐべからず 不自由を常と思えば不足なし 心に望みおこらば困窮し足る時を思い出すべし 堪忍は無事長久の基 怒りを敵と思え 勝つことばかり知りて負くるを知らざれば害 その身に至る己を責めて人を責むるな及ば…

基礎からの神経科学(その2)脳科学と神経科学の違い

日本語では、「脳科学」と「神経科学」という単語があります。英語で言うと、「Brain Science」と「Neuroscience」に相当します。この2つは同じなのか。違うものなのか。しばしば、質問されたりもしますし、議論も見聞きします。たまたまWikipediaのページ…

基礎からの神経科学(その1)電気現象

科学分野の人ですと、「ファインマンの物理」を読んだことがあると思います。非常に初歩的なところから、本質をわかりやすく説明して、高いレベルにまで到達できるようになるような基礎知識を与えてくれる本でした。英語でも学べますが、深く考えることがで…

杜撰な科学

こちらのブログは、純粋に科学を語るということを目的としています。数年前ですが、日経バイオテクへの寄稿の中で、「バッドデータ」問題というのを話題にしたことがありました。 「科学研究では、学術論文発表前の学会発表、発表された論文、あるいは蓄積さ…

注意したい神経科学ツール

今回は、神経科学の研究で広く使われているツール、試薬について、その使用に注意を求めている最近の論文を紹介します。 (1)AAV9は高力価で使うと毒性があるSevere toxicity in nonhuman primates and piglets following high-dose intravenous administr…

基礎からの神経科学(序)高校の生物から始める

基礎からの神経科学として、何回かのシリーズで、最先端の神経科学をもっと理解できるようになるための知識を身につけるための本などを紹介してみたいと思います。 純粋に神経科学を勉強して、ちまたの自称「脳科学者」の話や「脳神話」に惑わされないために…

日本のMangaで学ぶ生物学

ハーバードのThe Coop(生協)の書店では、少しばかりマンガも売られています(地下です)。でも、1階の多くの科学関係専門書の中に混じって、この本も置かれています。3冊も。。Bruce AlbertsのMolecular Biology of the Cellは、1冊しか置かれていません…

新刊洋書:科学技術バズワードの本

バズワードというのは、「人に関心を持ってもらうため、もっともらしい説明が付けられた専門用語のこと(コトバンクより)」らしい。そういうのは沢山あります。実はよく知らないので、もっと深く勉強してみたいということがあると思います。日本ですと、新…

2017年のおすすめ生命科学の本(パート5)

2017年の生命科学関係の本を紹介してきましたが、このシリーズは今回でお終いです。最後は、キャリア関係のものです。 この本は、2016年夏に出版されたものですが、去年、私が研究している建物の玄関のところで紹介されていて知った本です。 Women in Scienc…

2017年のおすすめ生命科学の本(パート4)

今回は、ハーバード大学のThe COOP(生協)の書店の入り口のところに、沢山積み上げられていた神経科学(?)関係の本を中心に紹介します(写真)。 TheCoop - The Harvard / MIT Cooperative Society Store. (1)ヒトの行動生物学 まず、最初の本は、この…

2017年のおすすめ生命科学の本(パート3)

今回と次回は、「神経科学」「脳科学」関係の本を紹介したいと思います。 日本では、脳科学というと、テレビ番組によく出演している自称「脳科学者」の書いた本がよく売れているようです。拙ブログは、純粋な科学を語ることにしているので、こうした書物につ…

2017年のおすすめ生命科学の本(パート2)

パート1では、遺伝子関係の本が中心でしたが、今回は2冊の「歴史書」の紹介です。歴史の中では、為政者の戦争や政治などに埋もれてしまいがちなのが、民衆のあいだに広がって、国の命運にも影響を与えた感染症と飢饉。こういうものに対して戦ってきた人々…

2017年のおすすめ生命科学の本(パート1)

2018年になりました。明けましておめでとうございます。さて、このブログでは純粋に「科学」について説明するということにしていきたいと思います。 論文紹介などもできたらと思っていますが、取り敢えず、年始ということで、数回にわたって、印象に残った去…