わがまま科学者日記

純粋に科学のお話をしたい。。

2017年のおすすめ生命科学の本(パート1)

2018年になりました。明けましておめでとうございます。さて、このブログでは純粋に「科学」について説明するということにしていきたいと思います。

 

論文紹介などもできたらと思っていますが、取り敢えず、年始ということで、数回にわたって、印象に残った去年の洋書、和書を紹介してみたいと思います。

 

(1)2017年ノーベル生理学・医学賞関連

最初は、新刊というわけでないのですが、2017年ノーベル生理学・医学賞関連の本。

www.nobelprize.org

 

Time, Love, Memory: A Great Biologist and His Quest for the Origins of Behavior (英語) 2000/4/4 Jonathan Weiner (著)

この本は、2017年ノーベル生理学・医学賞に関わる発見の物語です。日本の科学者の本というのは、研究や発見に関わる経緯というのを生々しく語るというのが、非常に少ないのですが、そういう意味で、科学研究の本来の楽しさ、興奮、そして挫折などを伝えている良書だと思います。特に、本来、ノーベル賞を受賞するべきだったシーモア・ベンザー博士の貢献が詳細に記述されています。

 

 

ハヤカワ書房から邦訳もでていたのですが、現在は入手できないようです。残念なことです。

時間・愛・記憶の遺伝子を求めて―生物学者シーモア・ベンザーの軌跡 

– 2001/12

 

(2)ゲノム編集関連の本

次は、今、ホットなゲノム編集関連の本。CRIPR/Cas9システムの発見者Jennifer Doudna博士が、自叙伝のように研究の経緯を生々しく書いた本で、これも科学研究というのが、どのように進むのか、というのを書いた良書だと思います。特に、研究者を目ざす女子学生の方に読んで欲しいです。

 

A Crack in Creation: Gene Editing and the Unthinkable Power to Control Evolution (英語) 2017/6/13 Jennifer A. Doudna (著), Samuel H. Sternberg (著)

 

もちろん、邦訳もでているので、既に読んだ方も多いでしょう。

CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見 単行本 – 2017/10/4

ジェニファー・ダウドナ (著), サミュエル・スターンバーグ (著)

 

(3)英語版を生命科学系の大学生が読むのによい「遺伝子」の啓蒙書2つ

基礎的な「遺伝子」の啓蒙書ということでは、このシッダールタ ムカジー氏の本。まだ、邦訳はでていないようですが、まもなく出版されるのではないでしょうか。安価ですので、英語版を生命科学系の大学生が読むとちょうどよいという感じです。

 

The Gene: An Intimate History (英語)

 2017/3/23 Siddhartha Mukherjee (著)

 

訳本が出版されたようです(2018/1/17 追加)。

 

ムカジー氏は、発見や研究の経緯の語り口がうまい。文庫本にもなっているこの本は既に目にした方も多いと思います。やや専門的な部分もあります。

 

がん‐4000年の歴史‐ 上、下 (ハヤカワ文庫NF) 文庫 

2016/6/23 シッダールタ ムカジー (著), Siddhartha Mukherjee (その他), 田中 文 (翻訳)

 

そして最後に、James D. Watsonらによるこの本も、似たような感じの啓蒙書です。ちょっと値段が高いのが、気になります。

 

DNA: The Story of the Genetic Revolution (英語)

2017/8/22 James D. Watson (著), Andrew Berry (著), Kevin Davies (著)

 

 

これは、既に翻訳されているこの本の「改訂版」です。この邦訳では、ヒトゲノム計画までとなっていますが、今回の改訂版では、「ゲノム編集まで」ということになるのではないでしょうか。

 

DNA (上、下)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス) 新書 – 2005/3/17 ジェームス・D.ワトソン (著), アンドリュー・ベリー (著), 青木 薫 (翻訳)

 

2017年に、今更のように、こういう基礎的な啓蒙書が刊行されたのは、やはり現実のものとなった遺伝子治療やゲノム編集というのが話題になっていて、いきなり「ゲノム編集」ではなく、遺伝子の基礎から改めて説明するという社会的な必要性が高まっているからなのかもしれません。