以前も書きましたが、この留学記は、現在にいたるまで、50回分くらいの量を想定しています。まだ、1995年くらいの時代、16回目であるということを、確認しておきたいと思います。
今回は研究そのもののアプローチでなく、研究者の人生でどんなことが大切か、ということを、簡単な単語を集めた名言で考えてみたいと思います。
早石修
運、鈍、根
Paul Ehrlichの4つのG。
研究資金(Geld)、忍耐(Geduld)、技能(Geschilk)、幸運(Gluck)
Fritz Lipmannは、それに2つのGを加えて、6Gとした。
知的情熱(Geist), 健康(Gesundheit)
忍耐と根性は同じでしょうし、幸運と運は一緒だと思います。したがって、以上を
まとめると、以下の7つが大切ということになりそうです。
鈍金(研究資金)
根(忍耐、根性)
技(技術)
運(幸運)熱(知的情熱)
体(健康)
これらのうち、ドイツ語の方は、西洋の合理主義みたいなものだと思います。早石先生の「鈍」というのは、東洋的というべきものかもしれません。ただ、科学者でも、あまりに鋭い人は成功しないということも、洋の東西を問わず、本当のことかもしれません。あまりに頭が良すぎる科学者はよくないというのは、寺田寅彦も言っていました。日本では、わりと認識されている観点だと思うのですが、今どきの日本の科学者を見ていると、「頭の良さ」を自慢する、「頭の悪さ」をけなす、という人も多いようで、少し気になります。
研究者の人生を考えるとき、この7つをどのように扱うのか、ということだと思います。この留学記のなかで、この7つがどのようになっていたのか、ということも考えていきたいです。
丸山工作さんの公式というのもあります。これは陳腐ですが、理解者の存在というのも大切でしょう。でも、+であって、xではないというのは納得です。
成果=能力xやる気x運+環境(伝統)+理解者
(能力=素質x努力)
ただ、これは成果とは何かということとも関係しているでしょうか。単に、論文をたくさん発表するということであれば、この公式は当てはまりそうです。でも、論文をむやみにたくさん発表するということだけが成果ではないと思います。
それと、個人的には、このジャック・モノー(遺伝学者)の言葉が好きです。つまり、満足しないということです。
科学においては、自己満足は死である。
個人的な自己満足は科学者の死である。
自己満足の集まりは、研究の死である。
心の不安、心配、不満、苦悩が科学を育てる。
(ジャック・モノー)
Jacques Monod quote “In science, self-satisfaction is death.” - medium image 500 x 350 px
ただ、あまりに苦悩が大きすぎると、そればかりに支配されてしまい、科学研究どころではなくなってしまう、ということも事実であるとは思います。